ジュンク堂書店池袋本店さんで「旅するミシン店のフィンランド文化祭」好評開催中です。書店さんでの開催のため、フィンランド文化に関係する書籍を当店でセレクトして置いていただいております。以下がセレクトした書籍の紹介文ですので、ご覧いただければ幸いです。
・キルスティ・マキネン著・荒牧和子訳『カレワラ物語』(春風社)
https://honto.jp/netstore/pd-book_02552869.html
民族の起源を描いた叙事詩である『カレワラ』。フィンランドの独立期から現在にいたるまで様々な分野でフィンランド人にインスピレーションを与え続けています。
シベリウスの著名な楽曲『フィンランディア』をはじめとして、国民的画家のカッレラ、マリメッコの複数のデザイナーもこの神話をもとに創作しています。フィンランドで最も有名なジュエリーブランド名はずばり「カレワラ」。
自然に対峙した古代の開拓民たちの神話は人物も自然もバイタリティに溢れ物語はダイナミック。
フィンランド人がつくるアート作品には何かしらのほの暗さが執拗低音として入っているように感じます。そのほの暗さはこの叙事詩が描いている日照時間が少なく冷涼広大な大地を開拓していった祖先の記憶から来ているようにも思えます。
トールキンが『指輪物語』を構想する際にも下敷きにしたこの壮大な叙事詩は、韻を踏んだやや難解なものですが、この本は読みやすい現代的な文章としてまとめられていて入門には最適です。
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・石野裕子著『物語フィンランドの歴史』(中公新書)
https://honto.jp/netstore/pd-book_28678444.html
首都ヘルシンキとロシアの古都サンクトペテルブルグ間は約300キロで、東京・名古屋間ほどの距離感です。
覇権大国ロシアの大都市圏に至近という地政学的な運命はフィンランド人に様々な試練をもたらすとともに、同時に鍛えてきたようにも感じます。
ロシアと上手くやらないといけないが、距離もおかないと独立が保てない。価値観が近い隣国の旧宗主国であるスウェーデンは中立政策を守るのに必死であまり頼りにならない。2つの大戦ではロシアの伝統的な仇敵であるドイツに頼ったが、結果は悲惨でした。そして、フィンランドは自分たちがソ連(ロシア)に至近というハンデを逆にテコにして、単独でソ連との瀬戸際外交に臨み、戦後の繁栄を築く交渉結果を得ることになります。
自分たちの立場を見極め、逆境を強さにするしたたかさとリアリズムは日本の外交史ではなかなか見ることができません。本書はスウェーデン王国の支配下から、ロシアとの関係に苦慮しながらもたくましく生き抜いたフィンランドの歴史を知るのに最適な1冊です。
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・山川亜古著『ニューエクスプレスプラス フィンランド語』(白水社)
https://honto.jp/netstore/pd-book_29189792.html
フィンランド語を学ぼうと思ったときにおすすめの一冊。ダイアログごとに内容が進んでいき、初心者〜日常会話ができるくらいのレベルまで学べる。会話のやりとりからフィンランド文化を知ることもでき、ちょっとおもしろい言い回し(現地では普通に使われている慣用句かも)なども掲載されていて飽きることがありません。付属のCDで発音やイントネーションを確認できるので実践的。次のフィンランド旅行では、フィンランド人とフィンランド語で話したい!という方は、まずはこの本から始めてはいかがでしょうか。
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・吉田欣吾著『フィンランド語のしくみ』(白水社)
https://honto.jp/netstore/pd-book_26098012.html
「文法」と聞くとつい敬遠しがちになるが、それは普段話している言葉はいちいち文法を考えて話していないからだろう。この本が画期的なのは「文法」を考えなくていいと思わせてくれるところだ。ゆっくり順序立てて、フィンランド語にはこういう法則があるんだよ、とわかりやすく教えてくれる。
外国語を学ぶときに陥りがちな、日本語に一度変換して考えることが、いかに学習の邪魔をしていたかを痛感する。その言語で考えることが上達の第一歩。フィンランド語のルールを覚えてくると自然と単語も覚えたくなる。フィンランド語を学びたいと思っている人の入門書にぴったりの一冊。
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・橋本優子著『フィンランド・デザインの原点 くらしによりそう芸術』(東京美術)
https://honto.jp/netstore/pd-book_28440146.html
日常的に使うものほど、機能性、デザイン性に優れているべき、これがフィンランドデザイン基本。食器や家具、テキスタイルなど今や日本にも様々なフィンランドデザインが入ってきている。そのデザインに行き着くまでの構想やデザイナーの紹介など、ひととおり知ることができる一冊。
また、建築、美術などもまとめられているので、幅広くフィンランドを知りたい人におすすめの一冊。ヘルシンキ中心部の美術館で、実際に鑑賞できる絵画も掲載されているが、暗いタッチが多いのが印象深い。
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・トーベ・ヤンソン著・山室静訳『たのしいムーミン一家』(講談社文庫)
https://honto.jp/netstore/pd-book_03387165.html
第二次大戦終戦後から1950年代はフィンランドのデザインや文芸の全盛期となりました。それまで、フィンランドは内戦から対ソ連戦と戦争続きでした。永い冬を終えて、ようやく自由の風が吹きはじめた春のような終戦後の解放感がこの本にも溢れています。
ムーミンと言えばかわいいキャラクターが印象的ですが、本書は登場人物に仮託して人はどのようにして自由を感じとれるのかという哲学的な小説だとも言えます。作者は独立直後のフィンランド内戦時代に生まれ、青春期を二度の対ソ連戦争の時代に生きましたが、戦後の復興期に書かれた本書はムーミンシリーズでも最も明るく、シリーズの入門書としても最適な1冊です。