軍艦マンションでのファッション・ショーを見て来ました。

渡邊洋治という陸軍出身の建築家がいました。狂気の建築家とも言われています。彼の代表作といえる建築物が大江戸線・副都心線「東新宿駅」至近にあります。

「軍艦マンション」(ニュースカイビル)

夜撮った写真なので、はっきりとわかりませんが、このリンクの写真を見ると、戦艦の艦首のような特異な形状がよくわかります。

この「軍艦マンション」ファッションショーが3月10日にあったので見に行きました。

主催は「fab」という大学生の団体です。東京大学発祥の団体で、現在は様々な大学の学生が参加しています。

会場のモックアップですが、断面を見るだけでもこのマンションが独特な感じが伝わってきます。

竣工は1970年。若者によるカウンターカルチャーが一番輝きと熱を持った時代でした。分厚い壁と基礎からできた戦艦の中のような重厚な空間の中に、どこか人間の熱狂を刺激する何かが忍びこんでいる気がします。

照明が落ちて”of wa_ter/for matter“のショーがはじまります。このショーのキーワードは“対称性と対掌性”です。

対掌性は、あわせた手の形状が決して一致せず、鏡面への反射でしか対称性を得られない状態をいいます。対掌性を意識して、デザイン上のシンメトリーに囚われない服装が多かったように思います。

モデルさんに挟まれたデザイナーの増田拓哉さんです。法学を専攻されているとのことです。

モデルさんの服は体にあっているようで、よく見るとパターンが合わず隙間ができたり、綻びができています。

“僕たちはテレビでパリコレの映像を見たり、ショーケースでマネキンが着た服を見る。実際、自分の身体に纏う前に、飾られた服を見ることが当たり前になっている。でも、そこで見た服が僕たちの身体にぴったりはまる(=対称になる)ことはない。”

崩しているように見える服のパターンですが、実はトルソーの型からそのまま取り、それをそのままモデルに着せようとした結果だとのこと。綺麗なモデルさんでも、トルソーと対称になることはないことをスマートに表現していたことが印象的でした。

情報の中でしか認知できない自己という切り口は、ビートルズの名曲「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」を思い出せます。

この手製ニットのような服は返田岳さんの作品です。実は毛糸から編んだのではなく、8着のセーターを解体してつくった糸で編んでいます。

“糸を買ってから作ればオリジナルということが言われるけれど、糸自体も既製品だし、その境界は曖昧なものだと思う”

“手作り”のニットの糸が、実は既製品を分解したものだったというつくりは、よくある“オリジナル”という概念の足元をすくうような鋭さがあると思いました。

男性モデルが着た印象的な服は河野リサさん(写真右端の女性)の作品です。時間切れで詳しく話をきけなかったのですが、「袋」を表現してます。細胞や内臓を含めれば、人間は無数の袋で構成されているわけで、その身体性を可視化したものです。

いかにセンスの良いものを安くチョイスするかという“ファッション”に慣れていると、今回のショーのような批判的・哲学的な意味を持った装いは非常に新鮮でした。

fabは毎年1回のペースでファッションショーを開催しており、WEBから予約して申し込みができます。興味がある方は以下のURLをご覧いただければと思います。

ホームページ http://www.mode-and-science.net/

ブログhttp://mode-and-science.net/blog/

Twitter https://twitter.com/fab_tter

東大の総合研究博物館と協業したことがあるだけあって、展示する会場の選定も素晴らしいです。